8月初旬、用があって麹町に出かけた。
エアコン無し生活に慣れた体に地下鉄は痛いように寒い。
地上に出るとムッとするがホッとする。
この辺りは整然とした景色に出会える場所でもある。
美しい緑、ビル、青空、雲、ハイビスカス、エンジェル・・・
白いシャツに黒いズボンかスカートの男女が颯爽と歩く。
とんでもない高級車が流れていく。
料亭のマネージャーと女将がタクシーの到着を待つ。
そこを、農夫のパナマハット、色あせたユニクロのシャツ、スーパーのヨレヨレ寸詰まりのグレーズボンが歩くこともできる。
終戦記念日の8月15日が近い。
僕にとっては降伏敗戦の日だ。戦後っ子だが、身の回りには敗戦の匂いが残っていた。
小学校の給食では、GHQ(連合軍司令部)から支給された脱脂粉乳(粉ミルク)を飲んで育った。
GHQが児童の栄養失調を心配するほど貧しい戦後だった。
負けは始める前からわかっていて奇襲短期決戦で優位な講話を目指したらしいが。
死者310万人、広島、長崎に原爆まで落とされた。
だから二度と戦争はしないと誓ったのに。
きな臭い匂いが漂い始めている。
戦争前はとにかく景気が悪かったと聞いている。
日米交渉(石油全面禁輸問題)も決裂し、貧しさの不満の爆発を戦争に向かわせたのだろう。
「欲しがりません勝つまでは」と我慢させることもできた。
戦争の生の痛み、悲しみ、惨さを知る者が少なくなり。
党派を超えて護憲派と言われるじいさま、ばあさまも化石になった。
「戦争はもうしません」と言い切るのに難しさを感じる。
平和の理想とともに、経済と外交のかじ取りが要であると思う。
夏の陽射しにジリジリ焼かれながら、カラカラと氷のかけらが鳴る冷水ポットから喉に流し込む麦茶が身体中に染み込んでいく。
サイレンの鳴らない空の下で飲む麦茶は普通に旨かった。
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