今どきの納豆は発泡スチロールのパックにからし・たれ付きで売っている。
たれの方は昆布とか梅とか風味を工夫しているが、からしはその辺納得がいかない。
これ以上は減らせませんと申し訳程度のSIMサイズのやつが付いているのだから。
よほど舌の敏感な特定の男あるいは特定の女を対象にしているのだろうか?
だから、からしの味、いや、あのつ~んと鼻に抜ける心地の良い風味を忘れていた、いや忘れさせられていたような気がする。ドックフードに馴らされた犬が生肉の味を忘れてしまうように。
昔、経木という薄い木の皮で三角形に包んで売られていた納豆にはあの黄色い練りからしがたっぷりと盛られていた。
それが今や、流通の効率化やらコストの圧縮やらで、納豆のからしは商品の片隅に追いやられてしまった。
そして、その香辛料としての存在意義すら忘れられようとしている。
納豆のからしに光を当てよう。
業務スーパーでは3パック47円の「たれ・からし無しの納豆」を売っている。オマケのようなたれ・からしなど要らん。
家でパックの蓋をパカッと開けS&Bの和からしチューブからにょろにょろと好きなだけ絞り出すのだ。
たれは麺つゆを一垂らししてやれば十分。
箸でかき昆ぜたら、熱い白飯の上に糸を引かせながら滝のように落としてやる。
掻き込むように口にほうばれば、あの懐かしい辛みとツンと鼻に抜ける風味が走り回るのである。